京童ノ口ズサミ ① ニツイテカタルノミ
「あー、もしもし?」
「こちら、百当番です。どうされましたか?」
「あー、えっと、ちょっと他人様に不愉快なことをしたので、それに対して偉いヒトとお話ししたいんですけど。」
「どういったことでしょうか?」
「えっと、いまちょうどこの店を占拠したんですけど。」
「…。」
「あー、だからえっと、少し担当のヒトがいると良いのですけど。」
「あー、少しお待ちください。」
世界はいつだって驚きに満ちているが、それを知らないだけだ。こうして世界の驚きの一端が垣間見えることとなる。
「代わりました。捜査2課、三木と申します。どちらのお店を占拠されたのでしょうか?」
「あ、よろしくお願いします。私は、あ、そうか偽名を使わなきゃいけないんだから、えー、どうしよっかなー。宮崎でお願いします。」
「宮崎さんでよろしいですか?」
「はい、宮崎でお願いします。」
「では、宮崎さんどちらのお店を占拠されたのですか?」
「あ、はい、えーっと、ここは…。」
この場所を知らないことに気付いた。しまった。だれか起きているかな?
「少しお待ちください、ちょっと確認してきます。えっと掛け直すときはまた百当番で良かったですか?」
「えー、ではメモできますか?」
「はい、お願いします。」
「090-****-****にお願いします。」
「確認させていただきたいんですけど、090-****-****ですね。」
「はい、そうです。よろしくお願いします。」
しまった。場所と時間とかを確認してから電話するべきであった。仕方がない。このヒトなら知っているかな?とりあえず近くにいた男のガムテープを口から外す。
「すみません、ここの場所ってなんていう店ですか?」
「え? ここはマクマリー商店4番店になります。住所は神奈川県秦野市南矢野3-10-35です。」
「あ、ありがとうございます。」
メモるのが大変だ。漢字がわからないけどまーわかるだろ。
「えっとー、こういう場合って後、何か警察に言っておくことってありますか?」
「え?」
なんで不思議そうな顔をしているのだろう?
「あ、そっかー。そうだよなー。ありがとう。」
さて、住所はわかった。携帯電話かー。彼の携帯なのかな?ガムテープを口につけるなんて痛そうだな。
「あー、もしもし、先ほどお電話させていただいた宮崎と申します。三木さんのお電話でよろしかったでしょうか?」
「はい、三木です。えっと、お店はわかりましたか?」
「はい、神奈川県秦野市南矢野3-10-35です。」
「人質と言いますか、危害を加えているのでしょうか?」
「えー、はい、あー、まー加えているというか加えていないというか。お店のヒトと店内にいたお客さんにはいま動けないようにと、連絡が誰ともつかないようにはなっています。でも誰も殺していません。」
「…。わかりました。何か要求とかあるのでしょうか?」
部下の神崎にメモを見せて調べるように合図を送る。理解してくれると良いのだが。
「あ、はい。あります。そのためにこんな状態になってます。」
「どういったことでしょうか?」
「えっとー。これって私のこと信じてもらったってことでいいんですか?映画とかだと本当に占拠しているとか確認すると思うんですけど。」
「今神奈川県警が向かっています。しばらくお待ちください。」
「わかりました。ではまた確認が取れたら連絡してください。こちらの番号はご存知ですよね。」
「お待ちください。先ほど店の方とお客が動けなくなっていると仰いましたが子供はいますか?また何人ですか?」
「えーっと、数え忘れたのでまたあとででも良いですか?」
「子供の数だけでも今わかりませんか?」
「すみません、別室にいるのでわかんないです。」
「わかりました。確認が取れ次第また連絡します。」
しまった。別の部屋にいるって言っちゃった。単独犯ってばれるかな?ってか信じてもらえてるのかな?信じてもらえてないとまずいなー。困ったなー。狭い店内だから別に良いのだが1人定位置から動いているようだ。困るんだよなー。おとなしくしててって言ったのに。それくらい大人なんだからできるでしょう。どうしよっかなー。まーまだいいか。どうせ時間はまだまだある。大抵小説だとぴったりのタイミングで警察が見に来ることになっているけど、なかなか来ないもんだなー。仕事してほしいものだ。